新しいウェブサイトがAIに取り上げられるまでの時間は?

昨日作成したばかりのウェブサイトが、Google などの検索エンジンや ChatGPT のような大規模言語モデル(LLM)、さらには Bing や Google の AI 検索結果で取り上げられるまでにどれくらい時間がかかるのでしょうか。初心者にもわかりやすい言葉で、その仕組みとポイントを解説します。
検索エンジンによるクロールとインデックスの所要時間
まず、Google などの検索エンジンが新しいページを見つけ(クロールし)データベースに登録する(インデックスする)までの時間です。これは一定ではなく数時間でインデックスされる場合から、数週間かかる場合までさまざまです。一般的な目安は次の通りです:
サイトの種類・状況 | インデックスまでの目安時間 |
---|---|
高い権威性のサイト(有名サイトなど) | 数時間〜数日程度で表示されることもある |
新規サイトや新しいページ | 約 1〜2 週間かかるのが一般的 |
最適化が不十分なページ(構造不備や低品質など) | 最長で 1 ヶ月以上かかる場合もある |
このように幅がありますが、サイトの種類や状況によっておおよその目安があります。例えば、有名ニュースサイトの記事であれば数時間以内に検索結果に現れることもありますが、まったく新しい個人ブログの記事だとインデックスまでに一週間前後見ておいた方がよいでしょう。
インデックス速度に影響する主な要因
検索エンジンがインデックスする速さにはいくつかの要因が影響します。主なポイントを見てみましょう:
- サイトの権威性・信頼性:ドメインの信頼性が高いサイト(いわゆる権威サイト)はクローラー(検索エンジンの巡回ロボット)が頻繁に訪れるため、新ページも高速でインデックスされやすい傾向があります。逆に新規ドメインや実績のないサイトは優先度が低くなり、時間がかかりがちです。
- コンテンツの新鮮さ・更新頻度:頻繁に更新されるサイトや新鮮な内容(ニュース性の高い内容など)を持つサイトは、検索エンジンも重要とみなしより早くインデックスすることがあります。更新が滅多になく放置気味のサイトは巡回頻度も下がります。
- 内部リンク構造:新ページがサイト内の他の既存ページ(特にトップページ)からリンクされていると、クローラーがそのリンク経由で新ページを発見しやすく、早期にクロール・インデックスされやすくなります。逆に孤立したページだと見落とされやすいです。
- XML サイトマップの有無:サイトマップを用意し Google Search Console 等で送信しておくと、新ページを発見しやすくなりインデックス速度が向上します。特にサイト規模が大きい場合はサイトマップが有効です。
- 外部からのリンク(被リンク):他の信頼できるサイトからリンクが張られていると、クローラーはそのリンク経由で新サイトや新ページにたどり着くため、インデックスが速まる傾向があります。被リンクは「このページは価値がある」という投票のような役割も果たすので、インデックスだけでなくランキングにも好影響です。
- クロール予算:サイト内のページ数が非常に多い場合、検索エンジンは一度にクロールできるページ数(クロールバジェット)に限りがあります。そのため、大規模サイトでは新ページのインデックスに時間がかかる場合があります。
- サーバー応答速度:ページの表示が極端に遅かったりエラーが頻発したりすると、クローラーが十分にページを取得できずインデックスが遅れることがあります。サイトの速度や安定性も間接的に重要です。
これらの要因が絡み合うため、「新しいページは ○ 日で必ずインデックスされる」と一概には言えません。ただし、権威性が高く適切に管理されたサイトほど早く、実績がなく最適化不足のサイトほど時間がかかる傾向があるのは確かです。
インデックスを早めるための対策
上記の要因に対応して、インデックスを促進するいくつかの方法があります:
- Search Console での URL 送信:Google Search Console の「URL 検査」機能から新ページのインデックスをリクエストできます。これは直接 Google に「この URL をクロールして」と知らせる方法で、非常に有効です。
- サイトマップの送信:最新の XML サイトマップを用意し、Search Console に登録しましょう。サイトマップで新ページの存在を伝えることで、発見・インデックスが迅速化します。
- 高品質な被リンクの獲得:関連する他サイトや SNS で新ページが紹介されるよう促すと、結果的にクローラー経由で発見されやすくなります。特に既にインデックスされている信頼サイトからのリンクは効果大です。
- SNS での共有:新しいページを Twitter や LinkedIn などで共有すると、そこで拡散した URL をクローラーが発見し、検索エンジンが優先的に扱う場合があります。実際、Google は Twitter 上で広く共有された URL を素早く認識・インデックスする傾向があるとされています。
- 技術的な最適化:robots.txt やメタタグでクロールをブロックしていないか確認する、ページの表示速度を改善する、内部リンクを張る、重複コンテンツに適切な canonical タグを付ける等、基本的な SEO 技術を整えることでクロール効率が上がり結果的にインデックスも早まります。
以上を実施しても即座に反映される保証はありませんが、こうした工夫により新ページが検索エンジンに認識されるまでの時間を短縮しやすくなります。焦らず地道に対策していきましょう。
LLM(ChatGPT や Google Gemini)の情報取り込みと更新頻度
次に、ChatGPT などの**大規模言語モデル(LLM)**がウェブ上の新情報を取り込む仕組みと、その更新頻度について説明します。検索エンジンとは異なり、LLM 自体はリアルタイムでインターネットを巡回しているわけではありません。基本的に一度学習したデータ(コーパス)を元に回答を生成するので、新しいサイトを作った翌日にいきなり ChatGPT(標準モード)がその内容を知っている…ということは通常起こりません。
ChatGPT(OpenAI)の場合
OpenAI の ChatGPT(GPT-4 など)は、訓練データ(トレーニングコーパス)に含まれる情報に基づいて返答します。例えば GPT-4 の場合、その大部分のデータは2021 年 9 月頃までのウェブ情報で占められており、それ以降の出来事については知識が限られます。実際、OpenAI も「GPT-4 は 2021 年以降に起こった出来事については一般に知識が不足している」と述べています。したがって新規ウェブサイトの情報は、次回のモデルアップデートまで ChatGPT のベース知識には加わらないのが普通です。
では ChatGPT は最新の情報を一切使えないのかというと、そうでもありません。2023 年以降、ChatGPT にはウェブ検索機能(Browsing 機能)が導入されました。これはRetrieval-Augmented Generation (RAG)と呼ばれる手法で、質問に応じてリアルタイムにウェブから関連情報を取得し(検索エンジン経由でページを読みに行く)、その内容を踏まえて回答を生成する仕組みです。例えば ChatGPT に最新ニュースについて尋ねると、自動的にウェブ検索を行い記事を読み込んでから回答するといった動きをします。この機能のおかげで、ChatGPT でもインターネット上の新しいページを参照しながら回答を作ることが可能になりました。
ただし注意点として、ChatGPT が自力でウェブを巡回・記憶していくわけではありません。あくまでユーザーからの質問に応じてその場で検索するかどうかが決まり、都度新しい情報を取得しています。またこの検索機能は明示的に有効化する必要があったり、利用に制限があったりします(執筆時点では Plus プラン等で利用可能な機能)。したがって、新サイトの情報が ChatGPT に「学習される(知識として内蔵される)」には相応の時間がかかる一方で、検索を通じて「参照される」可能性はインデックスされさえすれば割と早いと言えます。
Google の LLM(Bard/Gemini)の場合
Google も ChatGPT に対抗する対話型 AI「Bard」を提供しており、今後は次世代のモデル「Gemini」を統合すると言われています。Google の LLM も基本原理は同じで、学習時点までのデータを元に応答します。Bard(2023 年時点でのモデル)は内部知識に限界がある場合、Google 検索と連携して最新の情報を取得することができます。たとえば Bard にリアルタイムな質問をすると、裏で Google 検索を行って結果を参照しながら回答してくれる仕組みです。これはChatGPT の Browsing 機能と同様に RAG を活用したものです。
つまり、Google の LLM もウェブの最新情報を直接"学習"しているわけではなく、検索エンジンを情報源としてリアルタイム参照することで新情報に対応しています。Gemini と呼ばれる新モデルについて具体的な情報更新頻度は明らかではありませんが、基本は大規模な学習モデルのため頻繁に(毎日というようには)更新されないでしょう。ただ、Google は自社検索エンジンとの親和性が高いため、検索経由で新サイトの情報を参照・回答に反映するという点では非常に素早いと考えられます。
まとめると、ChatGPT や Google の LLM 自体は新規サイトをすぐに知るわけではありませんが、検索エンジンに載ってさえしまえばそれを参照して回答を生成できるようになります。したがって、新しいサイト制作者にとって大事なのは「検索エンジンに正しくインデックスされていること」だと言えます。
Bing や Google の AI 検索結果に反映されるまでの仕組み
最近は Bing や Google も検索結果に AI を活用した要約表示やチャット機能を導入しています。Bing の「AI による回答」や Google の「Search Generative Experience (SGE、生成 AI 検索体験)」がそれです。新しいウェブページがこれらAI 検索結果に反映されるまでの流れと時間について見てみましょう。
Bing の場合(AI チャットとスナップショット)
Microsoft の Bing は、ChatGPT に類似した AI チャット機能を検索エンジンに組み込んでいます。Bing の AI チャットはユーザーの質問に対し、Bing 検索エンジンで該当情報を検索し、見つかったウェブページの内容を要約して回答します。その際、参照したページへの番号付きリンク(脚注)を提示し、回答の根拠となったウェブサイトを明示するのが特徴です。例えば Bing の AI に「○○ の使い方」を尋ねると、関連する複数のウェブ記事を裏で読み込み、その要点をまとめた回答を返しつつ、文末などに「[1][2]…」のような出典リンクを表示します。
新しいページが Bing の AI 回答に引用されるには、まずBing の検索インデックスにそのページが登録されていることが前提です。Bing のクローラーがページを発見・インデックスする時間は Google と同様に数日〜数週間程度と言われますが、Bing もニュースサイトや人気サイトの更新には比較的素早く対応します。特に特定の質問に対し新ページの情報が有用である場合、Bing 検索結果にそのページが表示されるようになり次第、AI による回答部分にも反映される可能性があります。具体的には、ページ公開後に Bing へインデックス登録 → 質問があれば AI が検索 → 回答に利用、という流れです。早ければ公開から数日で Bing の AI チャットがそのページ内容に言及することもあります(もちろんケースバイケースですが、後述の例のように迅速に取り上げられたケースもあります)。
Google の場合(生成 AI 検索・SGE)
Google は実験的機能として検索結果に生成 AI による概要(AI オーバービュー)を表示する SGE を提供しています。通常の検索では青いリンクの一覧が出ますが、SGE が有効な場合、ページ上部に質問に対する簡潔な要約が表示され、その下に参照元となったウェブページへのリンクが添えられます。Google の AI オーバービューは複数のウェブソースから情報を組み合わせて要約を生成し、ユーザーに「概要 + 詳しく知りたい場合のリンク先」を提示する仕組みです。たとえば、「初心者向け ○○ のコツ」という検索では、その答えに関連するいくつかのサイト(初心者ガイド記事など)からポイントを抽出し、AI がひとつの回答にまとめて表示します。その下には「~による解説」「出典: △△, □□」といった形で情報元のサイト名やリンクが示されています。
新しいページが Google のこの生成 AI 結果に反映されるには、そのページが Google 検索結果(オーガニック結果)の上位に出てくることがほぼ必須です。SGE の AI は検索ランキング上位の良質な情報を素材に要約を作るため、インデックスされただけでなく一定の評価を受けていないと情報源として採用されにくいのです。Google は「高品質なオンライン情報源を優先して活用している。情報の質を判断するため、長年培ってきた多くのシグナルを用いている」と説明しており、信頼性の高いサイト・コンテンツが AI 概要の材料になりやすいとしています。要するに、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の高いコンテンツほど SGE で引用されやすいということです。
では新規サイトはまったくチャンスがないかというと、そうでもありません。検索クエリによっては競合が少ないものやニッチなテーマもあります。そうした場合、たとえ新しいページでも内容が的確であれば Google 検索で上位に表示され、結果として SGE がそれを情報源として取り上げる可能性があります。一般には、公開から SGE に反映されるまで数週間程度と見ておくのが無難ですが、他に代替情報がないユニークな内容であればもっと早く出てくることもありえます。
Google の生成 AI 結果も Bing と同様、元情報へのリンクをユーザーに提示する形になっているため、新規サイトであっても質が高ければAI が生成した回答経由でアクセスを獲得するチャンスがあります。「検索結果に出る」の先に「AI による要約でも引用される」という段階があるイメージです。
AI に取り上げられるためのポイント(信頼性・拡散など)
新しいサイトが検索エンジンや AI の回答で取り上げられるかどうかは、これまで述べたインデックス速度やモデルの更新に加えて、サイトやコンテンツそのものの評価も大きく関わってきます。以下に、AI に情報源として選ばれやすくなるポイントを整理します:
- 権威性・専門性の確立:サイトのテーマにおける専門性や運営者の信頼性を高めましょう。検索エンジンは E-E-A-T を重視しており、AI もまたそれを踏襲して高品質な情報源を優先して参照します。専門的で正確な情報を発信し続けることで、ドメイン全体の評価が上がり、AI にも拾われやすくなります。
- 他サイト・メディアからの言及:信頼できる他のウェブサイトやニュース、ブログであなたのサイトが紹介されたりリンクされたりすると、一種の「お墨付き」となります。検索エンジン経由での認知が早まるだけでなく、AI も回答の根拠としてそうした引用実績のある情報を選びやすくなるでしょう。他サイトからの言及は難易度もありますが、プレスリリースや SNS での発信、コミュニティへの参加などによって徐々に増やせます。
- ソーシャルメディアでの拡散:Twitter(現 X)や Facebook といった SNS 上で記事が話題になると、一時的に多くの人の目に触れます。検索エンジンのクローラーも SNS 経由で URL を発見することがあり、SNS で話題になることはインデックス促進と評価向上につながる場合があります。AI が参照する情報も結果的にそうしたトレンドを反映しやすくなる可能性があります。
- ニッチな専門性の追求:大手サイトに埋もれがちな狭いテーマのサイトであっても、コンテンツの網羅性や有用性が高ければAI が情報源として選ぶ可能性があります。競合が少ないニッチ分野では、独自の価値ある情報を発信し続けることで新規サイトでも AI に参照されるチャンスを掴めます。
新規サイトが取り上げられた成功例・ケーススタディ
実際に、「新しく公開したサイトが AI に取り上げられた」例も少しずつ報告されています。例えば海外の SEO コミュニティでは、新規に公開したブログ記事が公開後 48 時間で Bing の AI チャット回答に参照元として表示されたという報告がありました。これはその記事が Bing 検索でいち早くインデックスされ、質問に対する有力な情報と判断されたためです。ChatGPT は Bing の検索結果に基づいて情報源を選ぶ傾向があるため、Bing で上位表示されたページは ChatGPT の回答にも引用されやすいのです。
一方、Google の SGEに関しては、ある新規サイトの記事が公開約 10 日後に AI スナップショット内で情報源として参照されたケースが確認されています。こちらは Google 検索でその記事がある程度上位に評価されたことで、SGE の要約にも組み込まれたと考えられます。SGE は検索ランキング上位の信頼性ある情報を優先して要約を生成するため、時間は多少かかったものの、その記事が専門性の高い有益な内容であったことが奏功したと言えるでしょう。
以上のように、新しいサイトであっても適切な SEO 対策を行い、高品質なコンテンツを発信すれば、数日から数週間程度で検索エンジンや AI の回答に取り上げられる可能性があります。もちろん必ずしも保証されたものではありませんが、地道な取り組みとコンテンツの充実によってチャンスを最大化できます。初心者の方は焦らず、まずは検索エンジンに素早くインデックスしてもらうこと、そしてユーザーに役立つ質の高い情報を提供し続けることに注力しましょう。そうすればいずれ、あなたのサイトが ChatGPT や Bing、Google の AI 検索で引用される日が来るかもしれません。
参考資料:
- Google 検索セントラル: 「Google に再クロールを依頼する方法」公式ドキュメント
- OpenAI: ChatGPT の知識カットオフに関する説明
- WordStream: Google SGE の仕組みと SEO への影響に関する解説
- LinkedIn 記事: 「Google インデックス速度」調査結果と高速化のポイント
- ANEMA ブログ: AI 検索最適化(LLMO)に関する洞察